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Essay

Introduction by Howard Greenberg

Introduction to the photo book “Resonance”
Howard Greenberg (gallerist)
2015

Today I immersed myself, or should I say I lost myself, in Yumiko’s photographs. We pose the question, “What is a photograph? “or more pointedly, “What can a photograph be?” The answer lies in the realm of many layers of experience. However, Yumiko’s photographs ask a different question of me. To where do these photographs take you? A simple answer could be to another place and time, more appropriate for a photograph of architecture or of an event. The place I travel to with her flowers and skulls is, however, not a physical, earth-bound location. It is a spiritual place – A quiet, private world of transcendence.

As you look, and look harder, a strange and elusive experience unfolds. The sensations of a life cycle from birth to death make you tingle, and you find yourself wondering what it is about these photographs. A merely physical description, simple enough to render, falls short. A scientific reading is certainly relevant and worth considering, but misses the point. The meaning and effect of Yumiko’s photographs are felt below the mind – somewhere between the heart and that place within, where profound experience occurs.

Accordingly, these are not adequate words of description to assist in understanding or appreciating these deep earth and lighter-than-air images. Yumiko Izu gives us only a path, a simple elegant passage, to a certain place. Material substance yields to metaphor and imagination. What at first glance is physical and curious, remains.

イントロダクション 「リゾナンス」写真集に寄せて
ハワード・グリーンバーグ(ギャラリスト)
2015年

きょう一日、井津由美子氏の写真にこの身を浸してきた。もしくは、当惑し、途方に暮れたと言うべきだろうか。我々はこれまで、常に「写真とは何か」という問いかけに向き合い、「写真の可能性」について考え続けてきた。おそらくその答えは、各々の経験に基づいた世界観の中に見つけることができるだろう。しかしながら、この写真集「Resonance」の作品群は私に、かつてない命題を突きつけてきたのである。

「これらの写真は我々をどこへ導くのか」—–。

彼女の創り出すイメージを触媒として、私は現世にはない「ある場所」に足を踏み入れた。建築写真や報道写真が提示するような次元には、決して存在しない場所である。花々や動物の頭蓋骨と共に私が訪れたのは、この世には存在しない精神的な空間であり、静謐で私的で超自然的な領域だった。

彼女の写真を飽くことなく見つめていると、実に不可思議な、得も言われぬ感覚に包み込まれていることに気づく。写真から湧き出てくるイメージ。その中に潜んでいる、誕生から死に至るまでの生命の大きなうねりに触発されながら、これらの写真が何を意味しているのかと、自問しないではいられなくなる。この問いに対して、物理的な説明や科学的な解釈を試みることは簡単かもしれないが、そのような行為はかえって、本質を見誤らせることになるだろう。なぜなら、井津由美子氏の写真の真髄とは、我々に深遠な「ある場所」を体験させる、その過程にこそあり、そこに至るまでの軌跡は、頭ではなく心の、もっとも奥深い部分でしか感知できないものだからである。

この序文は、彼女の写真の、大地よりも厚く、空気よりも軽やかなイメージを感じ取るための手助けにはならないかもしれない。井津由美子氏が示そうとしているのは、何処かに至るまでの道のりであり、現実には存在しない何処かへと我々をいざなう、優雅な旅へのパッセージ、そのものなのである。この旅路は、濃密な写真の存在感によって生み出される、メタファーと想像力に満ちあふれた世界につながっている。初めて彼女の写真を見た時の衝撃や、尽きせぬ好奇心は、旅を終えた後もずっと消えずに残り続けるだろう。

訳 井津由美子